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 和食をぐっと引き立てる「つくだ煮」

 

 つくだ煮とは ◆

つくだ煮はしょう油、砂糖、飴、みりん、調味料などで濃厚な調味液を作り、 魚介類や昆布などの藻類を煮熟して調味液を浸透させ保存性を高めた食品です。
日本に古くからある干物とともに貯蔵性の長い伝統的な保存食品の一つです。

日本人の主食であるお米はそれ自体には味がなく、塩分やしょう油などのうまみ成分を補充することできわめておいしい食物となります。

つくだ煮はお米と大変相性の良い保存食品として、また、お米にはないたんぱく質やカルシウム、リンなどの重要な無機成分を補う伝統的な副食物として受け継がれてきました。


 つくだ煮の種類 ◆

つくだ煮の原料として一番多く使われるのは水産原料で残りが農産物、畜産物その他の原料です。
水産原料には乾燥原料と生鮮原料があり、加工、保管、輸送の便利さや年間を通じて入手できることから乾燥原料が圧倒的に多くなっています。

つくだ煮にはさまざまな名称がつけられていますが、一般的なつくだ煮の種類を 下に挙げました。

佃煮:
小魚、貝類、海藻などを醤油、砂糖、みりんなどで味濃く煮しめた食品
甘露煮:
アユ、ハゼ、フナなどの小魚やくり、キンカンなどの果物を砂糖とみりん または蜜、水飴などで甘味をつけて煮た料理
しぐれ煮:
貝類などにしょうがや山椒などの香味を加えてたまり醤油で煮しめた食品
くぎ煮:
関西で小女子の佃煮のことをさびた釘に似ているためくぎ煮と呼んでいます

 

 つくだ煮の起源 

佃煮の起源は、古く江戸時代にさかのぼります。
摂津の国、佃村の漁民が保存食として近海で獲れる小魚を塩水で煮込んで作ったのが始まりで、それがたまたま将軍の食膳に供され美味とおほめに預かり、褒美に江戸の墨田川河口の小島、佃島に土地を与え一部を移住させました。

移住した漁民は、江戸湾岸の漁業権を持って魚を獲り生で、或いは塩煮にして江戸町民への食糧供給を業としました。

天文4年(1535年)紀州湯浅に従来なかった新しい調味液、醤油が誕生しました。
醤油が佃煮にも使用され、塩の代わりに醤油を使うと見映えも良く、味も良く保存も よい、三拍子揃った煮付けが出来上がったのです。
以来その評判が伝わり諸国に佃煮が庶民の副食として普及したと言われております。 

当時は、近海で獲れる海老、貝類、小魚であったのが江戸時代の後期にみりん、砂糖が出回ると次第に山の幸、湖や河川の魚介類、野菜類豆類と種類も多彩なものとなり各地名産佃煮として欠かせぬ存在となって来ました。

伝統の味「佃煮」は日本人の嗜好食品として時代と共に愛される道を歩んで来たのです。

 

  つくだ煮の歴史 ◆

江戸時代

つくだ煮は漁師の備蓄用の保存食糧としてできたのがはじまりでした。
佃島の名物にすぎませんでしたが、江戸末期につくだ煮と称して販売する店が登場しました。
当時は生産量もわずかで店頭販売を兼ねた小規模なもので一部の上流階級の高級な嗜好食品でした。

 

明治時代

西南の役や日清日露の戦争で缶詰とともに軍用食として認められ需要が大きく伸び、 家内工業から小規模な工場生産に発展し、生産量も急激に増加しました。
その後明治の後半くらいになると東京を中心に料理に甘味をつけることが流行します。
それが佃煮にも用いられるようになりました。

 

大正時代

つくだ煮に乾燥の原料を多量に使用するようになると製造の機械化が進み、次第に嗜好食品から実用的食品になり、大量生産方式に移っていきました。
さらに、つくだ煮の需要は関東大震災を転機として急激に上昇しました。

 

昭和時代から
現在へ

戦火の拡大にともなって軍用食、非常食として需要が増大しましたが国家が戦時体制に移行するにつれ原料や資材の配給停止、労働力の不足などから一時衰退の道をたどりました。
しかし、戦後、統制経済が解かれ自由な価格と品質の競争がはじまり、生産技術と設備の進歩と流通の発展によって、つくだ煮はより身近な食品としてさまざまな販売形態で流通しています。

 

 つくだ煮の科学 ◆

保存性

佃煮の保存性を高める重要な製造工程として煮込みと冷却があります。
煮込みによって原料の水分が調味料と置き換わり、味付けと同時に脱水がおこなわれます。
また、煮上がった製品をいっきに冷却することで水分を蒸発させ、原料に調味液の皮膜を つくることで保存性を高めます。
つくだ煮の含水量が40%以下になれば一般微生物の発育が阻害され、食塩濃度と糖度を高めることで微生物自体の水分を浸透圧によって奪い 保存性が高まります。
近年は流通や包装資材の発達によって塩分をおさえ、より素材の味を生かしたうす味のものや甘口の味付けのものに嗜好が移ってきています。

 

成分と栄養

小魚や貝類のつくだ煮は全体を煮込んでつくるため、カルシウムや鉄、リン、ヨウ素などの無機質を豊富に含有しています。
また各種のビタミンやホルモンなども含んでいます。
昆布などの海藻類には多量のヨウ素を含み、海藻特有の粘質物はセルロースとともに 便通をよくし、さらに高血圧、甲状腺腫の予防に効果があるとされています。

 

おいしさの秘密

しょうゆに熱を加えると、中に含まれている多種類のアミノ酸等が反応してさらに複雑な香りやうまさが出てきて食欲を増進させます。
また、しょうゆの色を構成するメラノイジンという物質が酸化して褐色に変化するときに、魚や肉の生臭みを還元して食べやすくしてくれます。
さらにこの褐変物質は活性酸素を除去してくれる(抗がん作用)働きがあります。
砂糖が加熱してできるカラメルは香ばしい匂いを作り、つくだ煮をよりおいしくしてくれます。

 

 つくだ煮のよさ ◆

つくだ煮は調理をせずに食卓に上る常備菜として手軽に食べられる点で意外と現代人の生活に合っているといえます。

カロリーも例えば昆布の佃煮1食分(10g)で約6キロカロリーとヘルシーであるうえに佃煮の塩分濃度は昆布の佃煮100g中約4.3g、1食分10gとすると0.4gと意外に塩分はおさえられています。

 

参考文献: 「つくだ煮の化学と製造法」露木英雄・瀬戸 貞著